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監修:⼟器屋 卓志 先⽣ (⽇本放射線腫瘍学会 名誉会員)
放射線治療が実施されるがんは多岐に渡ります。ここでは、放射線治療が検討される代表的ながんについて簡単にご説明します。
脳にできた腫瘍を原発性脳腫瘍といいます。良性腫瘍と悪性腫瘍がありますが、悪性の脳腫瘍は発生した部位の周囲に染み込むように進行し、手術で全て摘出することは難しいとされております。また、抗がん剤などの薬物療法も効果が十分でないため、悪性の原発性脳腫瘍に対しては、手術、放射線治療、薬物療法を駆使した集学的治療が検討されます。原発性脳腫瘍の種類や広がり具合に応じて、脳全体への照射から腫瘍局所への照射までさまざまな照射方法・照射回数が検討されます。
頭頸部がんは口腔、咽頭、喉頭などにできるがんを総称します。手術ができない場合が少なからずあり、その場合化学放射線療法が主な治療法となります。放射線治療では、手術のようにがんがある部分を切除せずに治療するため、がんがあった場所の正常部分を残して治療できます。そのため、治療後の生活の質が手術より保たれるなどの利点があります。
肺がんは小細胞肺がんと非小細胞肺がん(肺がんの9割を占める)に大別されます。比較的早期の非小細胞肺がんに対する治療としては、手術が多く行われますが、高精度放射線治療でも同等の治療成績が得られております。また、体の状態、年齢、合併症などにより手術が難しい場合には、放射線単独あるいは化学放射線療法が主体となります。
がんが手術では完全に切除できない程度に進行している場合にも、化学放射線療法が主体となります。この場合、体の状態が良ければ、放射線治療と薬物療法を同時に行うこともあります(同時化学放射線療法)。
手術が困難と判断された限局性の病変の場合、局所治療の1つとして放射線治療が検討されます。近年、体幹部定位放射線治療や粒子線治療を用いることで高線量の照射が可能となり、治療効果が良くなっています。
前立腺がんは比較的放射線治療が選択されることの多いがんです。用いられる放射線治療は、外部から照射する外部照射治療と、体内から照射する小線源治療(組織内照射)とに大別されます。放射線治療で手術と同等の効果が得られます。最近の高精度放射線治療により、放射線治療の治療成績が格段に向上しており、放射線治療を選択する患者さんが増大しています。放射線治療は高齢者の方でも安心して治療ができます。
乳房温存療法では、目に見えるがん組織だけを手術で摘出します。その後、放射線治療を行い、取り切れなかった可能性のある、目には見えないがん細胞を死滅させ、再発を予防します。乳房を全て切除する場合でも、胸壁やリンパ節などから再発する危険性が高い場合は化学療法やホルモン療法に加え、放射線治療も行ったほうが良いとされています。
乳がんの場合、基本的には外来で治療が行われます。多くの場合、放射線治療による副作用は軽度で、仕事を継続しながら治療を受ける患者さんも多くいらっしゃいます。
診断時に手術が可能な場合で、手術前に腫瘍を縮小させたい場合や、他臓器転移はないものの、腫瘍が膵臓周辺の主要血管を巻き込み、手術適応がない局所進行がんの場合、化学放射線療法が選択肢として検討されます。高精度放射線治療の効果が期待されています。
比較的早期の子宮頸がん(I~II期)では手術と放射線治療の治療成績に差はなく、いずれも根治的治療が可能です。進行した場合(III~IVA期)は放射線治療単独または化学放射線療法が選択されます。子宮頸がんでは小線源治療(腔内照射)単独または外部照射との併用により根治治療が可能です。
※腔内照射:放射線源を子宮体部と子宮頸部に留置して行う治療方法
放射線治療は特に症状緩和(除痛)目的で検討されることが多く、それ以外にも骨折や麻痺の予防などの目的で検討されます。単回で照射される場合や、一定期間のうちに数回に分割して照射される場合があります。
転移性脳腫瘍は、他の臓器で生じたがんが、血液の流れによって脳に運ばれ、そこで増えることによって発生したものです。転移のもととなるがんとしては、肺がんが約半数と多く、次いで、乳がん、大腸がんなどが多いとされます。
治療方法としては、転移した脳腫瘍の数と大きさ、分布、最初にがんが発生した部位の状況や全身状態により、手術、放射線治療、薬物療法を、単独もしくは組み合わせる治療が検討されます。
放射線治療は重要な役割を果たしており、転移した腫瘍が小さく、個数が少ない場合には、腫瘍だけにピンポイントに放射線をあてる定位放射線治療が行われます。患者さんの状況によっては脳全体に放射線をあてる全脳照射が有効なこともあるため、個々の状況をふまえ検討されます。